認知症とは

「年をとったらもの忘れするのは当たり前」と思っていませんか。
記憶力も加齢の影響を受けますので、単純にものを覚える能力は若い頃よりは落ちるかもしれません。
けれど、その「もの忘れ」を放っておくと、記憶力低下が進行し認知症の状態になって、生活に重大な支障をきたすことにつながるかもしれません。
また、「定年で退職したからやることがなくなった」というので、周囲のことに興味・関心を示さず毎日ぼんやりと過ごしている方はいらっしゃいませんか。
人間の脳が活発に働いているときは、たとえ職業についていなくても年齢に応じたいろんなことに興味を持ち、いろんなことをやっているのが普通です。
認知症に対して使える治療薬が増えた現在、認知症を早期発見し、早期治療することがますます重要になっています。
あなたやあなたのご家族の脳の働きが落ちているのではないかと心配になったら、専門の病院で脳の健康診断を受けてみることをお勧めします。
認知症の種類
認知症にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる原因や症状を持っています。代表的なものを以下に紹介します。
アルツハイマー型認知症
認知症を発症する方の中で最も大きな割合を占めるのがアルツハイマー型認知症です。アルツハイマー型認知症では、脳内にアミロイドβというタンパク質が異常に蓄積し、脳細胞が徐々に死んでいくことで記憶力や認知機能が低下します。初期には物忘れが目立ち、進行すると時間や場所の認識が難しくなり、最終的には日常生活のすべてに支障をきたします。糖尿病や高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病との関わりも考えられています。
代表的な症状
- 数分前、数時間前の出来事をすぐ忘れる
- 同じ話や質問を何度も繰り返す
- いつも探し物をしている
- 昔から知っている物や人の名前が出てこない
- 日付や曜日がわからなくなる
- 季節に合った服装ができなくなる
- 以前はあった興味・関心がなくなった
- 今までできていた家事や作業ができなくなる など
アルツハイマー型認知症は、発症後、比較的ゆっくり進行することが特徴です。
血管性認知症
血管性認知症は、脳への血流が障害されることにより引き起こされます。脳卒中や小さな脳梗塞、動脈硬化などが原因となり、脳細胞が損傷を受けて認知機能が低下します。記憶障害や認知障害が急激に進行することが特徴です。
代表的な症状
- 突然、歩き方が不安定になったり、足元がふらつく
- 物事を順序立てて考えたり、計画を立てるのが難しくなる
- 話している最中に言葉が出てこないことが増える
- 気分が急に落ち込む、怒りっぽくなることが増える
- 自分の健康や周りの人の健康状態に無関心になる
- 複数のことを同時にこなすのが難しくなる
- 覚えていることと忘れることが激しく、突然の記憶喪失がある など
血管性認知症は、発症後、階段のように段階的に進行していくことが特徴で、血管の状態が悪化するにつれて急激に悪化します。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症の次に多く見られる認知症です。脳の神経細胞内にレビー小体と呼ばれる異常な物質が蓄積されることで発症します。初期症状としては、幻視や注意力の低下、パーキンソン病に似た運動障害(手の震え、歩行の遅さなど)が現れることが特徴です。
代表的な症状
- 見えないものが見える(幻視)ことが頻繁に起こる
- 睡眠中に突然体を動かして暴れたり、夢の中で行動する
- 日中に突然意識がぼやけて、混乱してしまうことがある
- 手足の震えや歩き方が遅くなる、筋肉が硬直して動きにくくなる
- 注意が散漫になり、会話の途中で話が脱線することが多くなる
- 突然、感情的になったり、興奮したりすることが増える
- 数分前の出来事を覚えていない など
レビー小体型認知症は、発症後、調子の良い時と悪い時を繰り返しながら徐々に進行することが特徴です。
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症は、前頭葉や側頭葉が萎縮することにより発症します。主に人格や行動の変化が目立ち、感情の制御が難しくなることがあります。記憶障害が遅れて現れることが多く、社会的な判断力が低下したり、興味や関心が減少することが特徴です。
代表的な症状
- 自己中心的になる、無関心になる
- 社会的ルールやマナーを無視する
- 言葉が出にくくなる、話がまとまらない
- 喜怒哀楽が乏しくなる
- 以前楽しんでいたことに対して無関心になる
- 計画性や組織力の欠如 など
前頭側頭型認知症は、発症後、アルツハイマー型認知症と同様にゆっくり進行することが特徴です。
認知症の予防方法
生活習慣の改善

認知症は、生活習慣を見直すことで発症や進行のリスクを抑えられます。バランスの取れた食事(DHAや抗酸化物質を含む食品の摂取)、適度な運動(ウォーキングや体操)、良質な睡眠といった健康的な生活習慣の維持が認知症の予防に役立ちます。
また、脳への刺激が減少すると脳の老化が進み、発症リスクが高まるため、積極的に外出して人や環境から刺激を受けたり、趣味などの娯楽を楽しむことも有効です。
こうした生活習慣の改善や脳の活性化は、発症予防だけでなく、すでに認知症を発症した場合でも、症状の進行を遅らせる効果が期待できます。
認知症の治療方法
加齢と共に進行する認知症は、現代の医療では根本的な治療方法は確立されていませんが、薬物療法やリハビリテーションによって進行を遅らせることは可能です。
薬物療法

アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症の場合、薬物療法を用いることがあり、記憶力や認知機能の低下を抑える薬や、症状の進行を遅らせる薬が処方されます。
一方、脳血管性認知症では、認知症の進行を抑える薬は効果が期待できないため、高血圧の治療や血流の改善を目的とした対症療法が中心となります。脳血管疾患の再発防止が重要です。
認知症患者の場合、薬の飲み忘れが起こりやすいため、家族や周囲の人のサポートによる適切な服薬管理が必要です。服薬を継続することで、症状の進行を抑える効果が期待できます。
非薬物療法

薬を使わず、五感を刺激して脳を活性化させる非薬物療法もあります。
記憶や注意力を維持するための認知リハビリテーションや、昔の思い出を語ることで情緒の安定や認知機能を刺激する回想法、音楽や絵画などで感情を引き出し、リラックス効果を促進する音楽療法・芸術療法、軽い運動や散歩で身体機能を維持し、認知機能の低下を抑える運動療法など、さまざまな方法があります。
当院では、認知機能の低下している方を対象とした外来プログラムを実施しています。詳細は下記をご覧ください。
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当院では、認知症の専門外来として老年期外来を開設しています。認知症の早期診断・早期治療のために、自分自身はもちろん、家族や友人など周りの方に認知症の兆候が見られる場合は、一人で悩まず受診相談係へご相談ください。
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