アルコール依存症とは

あなたの周りで、お酒を飲み過ぎる人はいませんか?
もしくは、あなた自身「飲み過ぎた!」と思うことはないですか?
一度飲み出すと止まらない、二日酔いがひどくて仕事に行けない、家族に注意された、健康診断で肝臓が悪いと言われた、などなど。
お酒を止めるまたは減らすことで、体も心も健康になりますし、仕事も家庭も円満になります。
当院では、お酒を止めたい、減らしたいというご本人の相談はもちろんのこと、ご本人の飲酒問題で困っているご家族の相談も受け付けています。
アルコール依存症の症状
アルコール依存症では、以下のような精神的、身体的、社会的な症状が現れます。長期間の過度な飲酒によって飲酒のコントロールが効かなくなり、症状や悪影響が出ても飲酒をやめることができない状態に陥ります。
精神的症状
- 飲酒しないと落ち着かず、常に飲みたいと感じる
- 飲みすぎを自覚しているが、止められない
- 飲酒のことばかり考え、他の事に集中できない
- 楽しく飲むのではなく、ストレス解消のために飲む
- 飲酒を隠すために嘘をつくことが増える
身体的症状
- 以前より多く飲まないと酔えず、飲酒量が増える
- 飲酒をやめたときに震え、発汗、吐き気や不安感が現れる
- 胃腸障害、肝硬変や脂肪肝、高血圧などの症状が現れる
- 飲酒後は寝付きやすいが、疲れが取れない
社会的症状
- 周囲との関係が悪化し、孤立することが増える
- 飲酒のせいで仕事に集中できず、パフォーマンスが落ちる
- 飲酒のためにお金を使いすぎ、生活が困難になる
アルコール依存症の原因
アルコール依存症は、身体的・心理的・社会的要因が複雑に絡み合って引き起こされます。遺伝的な要因だけでなく、環境要因やストレスなども大きく関係しています。
発症の要因
- 人間関係のストレスや家庭内の不和
- 心の病気(うつ病・不安障害など)の継続
- トラウマや喪失体験
- アルコールへの耐性が高くなること
- 社会的な孤立や孤独感
- 経済的な困難や生活の苦しさ
- 飲酒の多い環境での生活
- 親や家族からの遺伝的要因 など
アルコール依存症になりやすい人の特徴
以下の特徴に当てはまる人は、アルコール依存症になりやすい傾向があるため注意が必要です。
ストレスを感じやすく、発散が苦手な人
仕事や家庭、人間関係などで強いストレスを感じても上手に発散できない人は、気分を落ち着かせるためにお酒に頼ってしまうことがあります。最初は気分転換のつもりでも、次第にお酒なしではリラックスできなくなる危険性があります。
感情のコントロールが苦手な人
イライラしたり、不安になったり、寂しさを感じたりした時に、その気持ちをうまく抑えられず、アルコールで気分を和らげようとすることがあります。感情の起伏が激しい人は、アルコールに頼ることで一時的に楽になっても、根本的な問題が解決しないまま依存に陥ることがあります。
孤独を感じやすい人
家族や友人とのつながりが少なく、孤独感や寂しさを感じる人は、アルコールを「心のよりどころ」にしてしまうことがあります。一人で過ごす時間が多い人ほど、お酒に依存しやすくなると言われています。
依存しやすい性格の人
スマートフォンやゲーム、ギャンブルなど、何かに夢中になると止められなくなるタイプの人は、アルコールにも依存しやすい傾向があります。一度飲み始めると、量が増えてしまい、気づかないうちにコントロールが難しくなることがあります。
家族や親が飲酒習慣を持っている人
家庭で日常的にお酒を飲む場面を見て育った人は、「飲酒は当たり前のこと」と考え、若いうちから飲酒に抵抗感を持たないことがあります。また、遺伝的にも依存しやすい体質を持っている場合もあり、注意が必要です。
精神的な不調を抱えている人
うつ病や不安障害など、心の病気を抱えている人は、症状のつらさを忘れるためにお酒に頼ることがあります。しかし、アルコールは一時的に気分を和らげるだけで、症状が悪化することもあるため、専門的な治療が必要です。
長い間、飲酒習慣が続いている人
「毎日少しだけだから大丈夫」と思っていても、長い期間飲酒を続けていると、次第に体がアルコールに慣れてしまい、より多くの量を飲まないと満足できなくなります。そうなると、知らないうちに依存症に陥るリスクが高まります。
また、男性は女性よりも発症率が高い傾向がありますが、女性の場合はアルコールの代謝が遅いため、少量の飲酒でも依存症の進行が早く、肝機能障害などの合併症を引き起こしやすいと言われています。
アルコール依存症の治療方法
アルコール依存症は、専門的な治療を受けることで回復が可能です。治療には主に「心理社会的治療」と「薬物療法」の2つの方法があります。どちらも患者の状態に応じて組み合わせて行われることが多く、段階的な回復を目指していきます。
心理社会的治療

心理社会的治療では、本人がアルコール依存症であることを自覚し、飲酒をやめる意識を高めます。カウンセリングや認知行動療法などを通じて、飲酒に至る状況や心理的なきっかけを見直し、飲酒の代わりとなる新しい習慣を身につけます。
また、自助グループへの参加も有効で、同じ悩みを持つ人と交流しながら互いに支え合うことができます。家族へのサポートや理解も、回復への大きな力となります。
認知行動療法
認知行動療法は、アルコール依存症の治療でよく用いられる心理社会的治療の一つです。認知行動療法では、飲酒のきっかけや考え方のクセ(認知)、そして飲酒につながる行動パターンを振り返り、新しい行動パターンを身につけることを目指します。過去の飲酒に対する考え方(価値観)を見直し、飲酒を避ける方法や断酒を続ける目的について考えを深めることで、再飲酒の防止にもつながります。
薬物療法

薬物療法では、アルコールへの欲求を抑えたり、飲酒による不快感を引き起こしたりする薬を使用します。代表的な薬には、飲酒時に強い不快感を感じさせる「抗酒薬」や、飲酒欲求を軽減する「断酒補助薬」などがあります。
ただし、薬物療法だけでは依存症を克服するのは難しいため、心理社会的治療と併用することが重要です。医師の指導のもとで、適切な薬を継続して使用することで、再飲酒のリスクを減らすことができます。
当院でのアルコール依存症治療
当院では、アルコール依存症の患者を対象とした入院治療を行っており、10週間の入院期間を基本としています。入院後は、アルコールを安全に体から抜くために検査や点滴などの身体管理を行います。その後、ARP(アルコール・リハビリテーション・プログラム)で過去の飲酒生活や人間関係を振り返り、退院後に断酒を続けるための知識や知恵を学んでいきます。
当院の依存症回復プログラムについては、下記ページをご覧ください。
また当院は、アルコール依存症の方の治療の他に、アルコール問題の予防にもいち早く取り組んでおり、多量飲酒者への節酒指導の技法開発も行っています。 当院で開発、作成したワークブック『あなたが作る健康ノート』の基礎編、応用編と飲酒日記『あなたが作る健康日記』は、その有効性を国内で高く評価されています。 この度、飲酒運転対策あるいは生活習慣病予防に携わる多数の皆様からのご要請に応えフリーアクセスとしましたので、ダウンロードしてご使用ください。
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書籍刊行情報でも詳細をご案内しております。
お問い合わせ
アルコール依存症は、早めに対応することで再飲酒のリスクを減らし、健康的な生活を取り戻すことができます。しかし、自分では依存していることに気づきにくい病気でもあります。
当院では、アルコール依存症の専門外来を設置しています。飲酒をやめられない、飲みすぎが続いていると感じる方、または「家族がアルコール依存症かも?」と不安に思われている方は、まずは受診相談係にご相談ください。
受診相談係
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